携帯に、一通のメールが届いた。
バンドのボーカルの人からである。
タイトルは無題。
いつものように絵文字を使っての挨拶。
しかし、その先は違っていた。
「これがあたしの最後の[バンド名]に向けてのメールになるかもしれないです」
死亡フラグ?
つーか、これって何て
続きを読んでみると、バンドを抜ける的な内容が…。
自分は今年、大殺界の最初、つまり陰影で、今月の運気は大殺界の中盤、つまり停止である。
これは、その影響なのか。
そういえば、演奏が終了したときに彼女は言っていた。
「スタジオ代がもったいない」
それほど酷かったということである。
そして、ここで俺は重要なことに気付いた。
「スタジオ代を払っていない」
その日、スタジオ練のすぐ後に学校でリハーサルがあったので、金を集める暇もなく、彼女がまとめて払ったのだ。
300円とはいえ、払わない訳にはいかない。
しかし、気まずい。
よし、やっぱ無かったことにしてしまえ。
メールの終盤には、こんなことが書かれていた。
「ギターはまだまだ探さなきゃいけないだろうけど(以下略)」
我がバンドには、ギターは俺しかいない。
このタイミングで書くということは、これはフラグが立っていたということなのだろうか。
しかし、立てた覚えはない。
気のせいだろう。
最後は端的だった。
「じゃあこれで。本当ありがとう」
あっさりとしていたが、重さが伝わってきた。
彼女は演奏中に何を思っていたのだろう。
初めは成功願いつつ、楽しもうとしていたのかもしれない。
ところが、だんだん自分の求めているものと現実の違いを感じ始めたのだ。
「何かが違う」
自分では分からない。
しかし、ズレを感じる。
それは、歌にも表れていた。
聞き返せば、叫んでいた。
どうすればいいのかわからず、やけになっていたのだ。
そういえばこんなことがメールに書かれていた。
「(あたし)感情が顔に出るしさ……」
彼女は感情が出やすい性格なのである。
だから、歌にも感情が出てしまったのだ。
ネタのように書いてしまったが、現在まだ、解決はしていない。
おそらく、ベースの人が交渉しているだろう。
そんな深刻なときに、頭が冴えて数学の問題がスイスイ解ける俺って…。